月の果て
しかし、馬車はゆっくりと停車した。
────…?
「トラキア?」
ソフィは、何事かと小窓からひょいと運転席を覗いた。
すると、
トラキアは、けたたましく前方を睨み付けていた。
「何のようだ?」
トラキアのドスの利いた声が響く。
その視線の先にいたのは、
黒衣装に身を包んだ妖しげな男──…
その男は、クスリと嫌みな笑い方をして
「いや、その馬車に乗っているという事はあそこから来たのかと思ってね」
と言った。
あそこ──…?
って、ナタナエル王国のお城よね?