月の果て


「ところで、どうしてお前はそこまでしたんだ?欲しいものがあるなら言いなさいといつも言ってあるだろう..」



────…言える筈がない、


キルトは、影を落とすと



瞳を閉じて、昔を思い出した──…



"──…キルトには、大切な人いないの?"


幼い少女が訊ねる。



"いませんよ"

キルトは、きっぱりと笑顔で答えた。



"どうして?"


キルトは、にっこりと微笑んで






"俺に愛された人は、可哀想だから─…"


と寂しそうな笑みを浮かべて眼帯を抑えた。



"可哀想なんかじゃないわ"

エリスは、泣きそうに瞳を歪めた。
< 272 / 482 >

この作品をシェア

pagetop