天使の降る夜
恋人になって三週間が経った或る日、初めて後ろ手に縛られて犯された。
ノーマルの時より激しく感じた。
より激しく愛されているという実感があった。
自分にこういう趣味があるのかと、悩む隙もなかった。
ベッドの上で、事の余韻を楽しんでいるいつもの時間。
「沙夜斗って……」
沙夜斗の髪をいじりながら、ふと口にする。
「んっ?」
いいかげんにうざくなったのか、恭の手を払って、沙夜斗が返事をする。
「ん~、別になんでもないけどさあ。沙夜斗って、綺麗な名前だよね」
「ハァ?」
なにを言っているんだという顔をして、沙夜斗は傍らの恋人を見る。
「なっ:::なんでもない!」
急に恥ずかしさが込み上げてきて、顔を真っ赤にして恭は枕に顔を埋める。
突拍子もなく、変なことを言った自分が恥ずかしかった。
そんな恭の様子を見て、沙夜斗は笑いながら上に乗ってきた。
「サンキュー。そんなこと言ってくれたの、お前だけ」
恭の耳朶を、甘く噛みながら囁く。
その時知った、彼は家庭からも、学校からも否定されて生きてきたことを。
そんな彼を愛しいと、心底思った。
自分に話してくれたことが嬉しかった。
「んっ」
おさまりかけていたくす火がまた燃え始める。
「ヤダッ!今はダメ」
感じすぎて恐い。
今日は四回も達って疲れている、できればもうしたくない。
「なにがダメなんだよ」
事を終えたばかりなので、まだ衣服すら身に付けていない。
沙夜斗は背中にキスの雨を降らせながら、恭が反応するのを待つ。
小さな炎が燃え始め、二人はまた、官能の炎の中へと落ちて行った。
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