何処にでもあるラブストーリー
「うん・・・両方・・・」
僕は今日まで、奈緒子といつも一緒に生きてきた、同じ景色や植物を美しいと感じ、同じ動物をかわいいと感じ、同じ映画のシーンに二人して感動を覚えてきた。 

時には奈緒子を僕の一部のように感じていたけど、いつも誰よりも近くに感じていたけど・・・
この一言で、今、奈緒子の言った一言で、誰よりも遠い存在に思えた。 気持ちが離れていると分かった瞬間。 同じ感性を持てないという不気味な感覚。 それはまるで、バベルの塔の崩壊、その地を支配し、絶対的な権力を持つ王が神に矢を向けた瞬間、炎の舌が天から舞い降りて、そこに居合わせて人間の全てが、共通の言葉を失う。 そんな不気味さ、気味の悪さを恋人だった奈緒子に感じた。 
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