何処にでもあるラブストーリー
車中、奈緒子は僕の用意したるるぶ観光案内をじっと読んで、ときどき彼女の気に
入った観光スポットを「これなんかどうですか?」と僕に勧めた。

真剣に観光案内を読み、ときどき僕に話しかける姿は、とても真剣で
その真面目さが、なんだか子供っぽく思え可愛らしく感じた。 それを見ていると、
なんだか気を許せる気がした。 

気を許す・・・この感情は僕の恐れている感情だ。 好きだという感情を肯定して
しまうと、止め処も無く、思いを寄せてしまう。そういった止め処なさが、僕にはあった。

ちょうどそれは、ダムの決壊に似ている。
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