カカオ100%



「あ、光輝。向こうで警察が呼んでるぞ」


 道路を挟んだ向かいの歩道を見ると、確かにこちらに向かって警察が笛らしきものを吹いている。

 えぇぇ。
 け、警察?

 お兄ちゃんてば、何やらかしたのよっ!!


「あ。しまった!ちょっと行ってくるから」


 信号が青になった途端、ダッシュで道路を突っ切って行った。


 "りっくん何もするなよ"と念をおして。


 ほんとにしつこいよお兄ちゃん。

 いくら妹でも呆れるよ。

 はぁと脱力感マックスのため息をもらした。



「手、出せ」


 謎の男(りっくん)が意味ありげにポケットに手をつっこむ。

 はい?手?      手出せって。

 手を繋げってこと?


 なんであたしがこんな奴と手繋がなきゃならないのよっ。


 ぷいっと頬を背けるあたしを見て、イケメンは無理矢理右手を引っ張った。


「クスッ…これ、やるよ」


 手の中に違和感。   かさっと固い感触が伝わってくる。

 何かを握らされた?


 イケメンはそう言って車に乗り込み、エンジンをかけ来た道を戻っていった。


「あ…」


 掌を開けると、キャンディみたいに包まれたチョコレートが二つ。


 さっき手を握られた時の違和感はこれか。


「伊織、そろそろ帰るか…ってりっくん先に帰ったのか?」



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