カカオ100%





「受け持ちは数学です。まだまだ新任なので、至らない部分もあると思いますが、よろしくお願いします」


 先ほどと同じ、ぼそぼそとした声で淡々と話す。

 うわぁ。
 やっぱあたしの一番苦手なタイプかも。


 自己紹介を終え、早川先生は静かに教室から出て行った。


「……じゃあ、授業を始めるぞ―。教科書P92を開けろ―」


 え―!と批判の声が生徒から出る。


 チッ、授業ないと思ったのに。


 まぁもちろん、その声の中に私の声も入ってるんだけどね。


「叫んでもダメ。はい、開けて」


 岩ちゃんの有無を言わさぬ声に、みんなしぶしぶ教科書を開ける。


 あぁ……。


 僅かな期待も裏切られてしまった。


 もう、早く放課後になれ―!!


 授業なんていつも聞いてるフリ、だ。


 窓の外を眺めてはうとうとする瞼を必死で堪える。


「……じゃあ今日はここまで!図書委員女子は放課後、数学教室まで来るように」


 授業から解放された安堵感がその最後の言葉でがらがらと崩れた。

 ん?
 図書委員女子……?

……ちょっと待てよ。


 それってモロあたしじゃん。


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