【SR】メッセージ―今は遠き夏―
「ねえ、もう一度改めて聞くけど……その結婚どうのこうのって話、一体いつ頃のことなの」
がっかりした顔で目を閉じた繁人は、コーヒーを一口含んで言った。
「約8年前、『ミスティック』で働いていた頃の話。
ある日突然浮気騒動が勃発して、モモカから避けられ、一方的に別れを告げられた。
付き合い始めて半年くらいの事だったんだけど、ぶっちゃけ、モモカの勘違いで。
けどモモカはもうそれ以来、一切の連絡を絶った……。はい、これでどう?」
19歳――百夏はもう一度、記憶の糸を辿る。
今の会社に入社する、一年前。確かに、27年間で一番荒んでいた時期ではあった。
反抗期らしきものがなかった百夏にとって、まるでそれが遅れてやってきたかのようだった。
何をしても悲観的で、母にも随分とつらくあたった。
色々な男と寝た。今では顔も覚えていないような男を、自分の中に受け入れたことも何度あっただろう。