【SR】メッセージ―今は遠き夏―
記憶
「あなたが……勘違いしてるってことは」
自分を棚に上げるわけではないが、存在する可能性は全て確かめておきたかった。
「もしも勘違いだったら、謝るよ。
でも、名前を呼んで振り向いたし、今もこうして話をしてるってことは、名前は合ってるわけだろう?」
「フルネームは?……あたしは、大澤百夏」
「……残念だけど、苗字は知らない。モモカのことは、結婚話がもっと進んでから、詳しく知ればいいと思ってたから。
けど、その前に別れちゃったしさ。
でもさ、いくら勘違いでもさすがに顔まで間違えないと思うけどな」
言葉を失った。
顔と名前が一致した勘違いなど、かなり低い確率だろう。
と、なれば残る可能性は――記憶喪失。
でもあまりに非現実的で、考えたくなかった。
だが、19歳の自分を断片的に覚えているだけで、残る断片がすっかり抜け落ちているということもあり得なくはない。