【SR】メッセージ―今は遠き夏―
「二人で撮った写真もあるよ。今日はさすがに持ち歩いていないけど。
もし良かったら、日を改めてそれを見てみる?」
繁人は頬杖をついた。
もはや呆れたような顔つきだ。
「お願い。それ、見せて欲しい。
そして、色々と詳しく話を聞かせて欲しい」
先ほどまでの高慢な態度とは一転し、百夏は頭を下げた。
「あなたが言うことが全て本当なら……あたし、その頃の記憶をすべて失ってるかもしれないの」
記憶に迷わず辿り着けるように、パンくずをちぎりながら歩いておけば良かった。
けれど、まさか自分が記憶の迷路に迷い込むなど、誰が想像するだろう――。
先ほど手にした絵本を眺めながら、百夏は静かにため息をついた。