【SR】メッセージ―今は遠き夏―
「なんとなく……そんな気もしてたところだよ。
でもそんなドラマみたいなこと、目の前で起こってるって実感がどうしても湧かなくて」
そう言いながらも、繁人は2日後に時間を作ってくれると約束をした。
「電話番号とメールアドレスを教えておいて貰えるかな。
運悪く、今日は家に携帯忘れちゃったんだ。
何かメモするもの探すから」
上着をまさぐり、ようやく内ポケットから一枚の紙を探し出した。
それが何かと確認する繁人の表情は、一瞬にしてばつが悪そうな笑顔に変わった。
「ははっ。会社のつき合いでたまたま行ったんだよ」
『club Gemini 桜』
――夜の店の名刺だろう。
金色の筆記体のロゴを引き立たせるような、美しい漢字一文字のキャストの名前は、色っぽい長髪の美女の姿を想像させた。