【SR】メッセージ―今は遠き夏―
しかし、謎は多い。
フルネームがわからない時点で、繁人がいう『モモカ』と自分とが一致しているかは怪しい。
そもそも、なぜ北海道なのか。
生まれてこの方、この地から出たことなどないというのに。
そして、その辺りの記憶が、すっぽりと抜けているのはどうしてなのか――。
単に忘れているだけにしては、事が大き過ぎる。
母に聞こうにも、当分の間聞けそうにない。
自分の身に起こっている現実は、到底理解できないままだったが、とにかく写真を見てからだと自分の気持ちを必死に片づけた。
「かくれんぼ」を出ると、もうすっかり日は落ちていた。
通りに向かって歩きながら、百夏はがっくりと肩を落とす。
ああ、また来ないバスを待たなければならないのか――。
ため息をついたその時、定刻より15分遅れのバスがタイミング良く入ってくるのが見えた。