【SR】メッセージ―今は遠き夏―
「あたしは……あなたと、どんな恋人生活を送っていたの」
自分が知らない自分を聞くのは怖かったが、恐る恐る口を開いた。
「ねえ、呼び方なんだけどさ、繁人、って呼んでみたら。当時に近くした方が、記憶が蘇るかもしれないし」
「……そうね」
「で、どんなかって聞かれても……別に普通の恋人同士さ。
モモカは夜の仕事だったし、平日は俺が店に行って、休日は一緒に一日過ごすって感じ」
目の前の繁人をまじまじと見つめた。
短髪できりっとした眉に、屈託のない笑顔。
顔の前で軽く組まれた細く長い指に、男性特有の荒々しさは微塵も感じない。
繁人と一緒に過ごしたであろう、楽しい時間を想像した。
デート。手のぬくもり。キス。……勿論、抱かれた夜もあったのだろう――。
……頬が、急に熱くなった。