【SR】メッセージ―今は遠き夏―
繁人は乗務員から貰ったキャンディの封を開けると、勢いよく口に放り込んだ。
途端、子供のように満面の笑みになる様子を見ながら、百夏は小さく微笑んだ。
「繁人っていくつなの」
「あと一ヶ月で30だよ」
「……三つ上かあ。繁人って童顔だよね、同い年かと思ってた」
「ああ、よく言われるよ。ちなみに、初めて会った時にも同じことを言われた」
過去に恋人同士だったとは思えないような会話が続く。
だが、今の百夏にはそんな時間がとても楽しく、気持ちの安らぐ時間だった。
もしも、小樽で記憶が戻らなかったらどうしたらいいのだろうか。
百夏の最大の不安はそこだった。
現地に行って、解決するという保証は全くないのに……今起こしている自分の行動は、安直過ぎたのだろうか。
ぐるぐると、答えの出ない悩みを巡らせた。
――新千歳空港到着まで、あと45分だ。