【SR】メッセージ―今は遠き夏―
百夏は小さく頭を下げたが、女性はフンと顔を逸らすと、駅の方へ向かって歩いて行った。
前から来る人に気付かないなんて……上の空もいいところだ。
今、いくら頭で考えても答えのでない、仕方のないことなのに……。
百夏は大きくため息をついた。
「大丈夫か」
前方で待っていた繁人が声を掛ける。
「ごめん。あたしはなんともないわ。
それより……お店にはもうすぐ着くのかしら」
駅からそう遠くないと聞いていた百夏は、辺りを見渡しながら言った。
「ああ、その角を曲がった雑居ビルの地下だよ。……行こうか」
もう、あまり深く考えないようにしよう。
覚悟を決め、小さく息を整えると、百夏は再び足を踏み出した。