【SR】メッセージ―今は遠き夏―
手を繋いだまま、再び通りへと向かった。
繁人が、自分と歩幅を合わせて歩いていることに気付く。
しっかりと握りしめる手から、深い思いまでが伝わってくるようだった。
「あ……」
突然、繁人が立ち止まった。
「あの人、ママだ……」
繁人の目線は、通りから路地へ入ってきた、一人の女性を見つめている。
小柄で、無造作に髪をまとめた黒い服の女性は視線に気付いたのか、繁人に目を合わせた。
だが、すぐにまた地面に目線落とし、こちらへ向かって足早に歩いてくる。
『ミスティック』へ続く階段を下りようとしたその時、繁人が声を掛けた。
「ママ、だよね」
呼ばれ慣れているであろう名称に、女性は即座に反応した。