【SR】メッセージ―今は遠き夏―
女性の目には、うっすらと滲むものが見える。
こちらに向ける眼差しは、日だまりのように温かく感じた。
その顔に、自然と優しかった母の姿を重ねた。
「……そう。よく来たわね。
忘れ物を取りに、たまたまお店に寄ったんだけど、なんて偶然なのかしら」
指でそっと目の縁を拭って、笑顔を浮かべた。
「……中で、お寿司でも食べましょうか」
女性は暗い階段を下り始めた。
無意識に、握る手に力が入る百夏。
繁人は口を結んで、右の眉を上げた。
「……大丈夫だよ。さあ、行こうぜ」
階下で鍵を開ける音が聞こえる。
カラン、というドアベルを合図に明るくなった店内を目指して、二人はゆっくりと階段を下りた。