【SR】メッセージ―今は遠き夏―
カウンター奥のボトルの棚には、いくつかの小さなみやげものが飾られていた。
こけしに博多人形、小さな熊の木彫り。
ひときわ目を引いたのが、民族衣装のようなものを着た、深い緑色の瞳が特徴的な卵形の人形だ。
どこかの国のみやげ品なのだろうが、こうしてすべて丁寧に飾ってあるところに、女性の人柄が伺えた。
「お母さんは、お元気にしてるの?」
「母は……5年前に他界しました」
百夏は、できるだけ自然に微笑んで見せたが、女性の目からは途端に涙が溢れ出していた。
「そう……それは……お気の毒に……。
じゃあ、百夏ちゃんはずっと一人なのね」
綺麗に塗られたファンデーションが崩れるのも気に留めず、女性は目頭を強く押さえた。
女性の姿を見ても、店内の様子を見ても、百夏の記憶のメーターは、相変わらず微動だにしない。
だが、カウンターに落ちた女性の涙に、自分との関係の深さを感じずにはいられなかった。