【SR】メッセージ―今は遠き夏―
千夏は、自分の本当の母のように、その女性を慕っていたという。
父が病に伏して、仕方なしに飛び込んだ水商売の世界。
右も左も分からぬ千夏を、優しく包み込んでくれたことがとても嬉しかったらしい。
「自分の家族のこと、あたしに全部話してくれたわ」
女性は、目を細めて話し始めた。
若かった両親は次第にすれ違い、生後6ヶ月の二人を抱えた状態で離婚話が出たこと。
二人ともとても我が子をかわいがっていて、最後まで親権について揉めたこと。
どちらも譲ることなく平行線を辿り続けたが、1歳の誕生日を目前に、お互いが一人ずつを引き取ることで合意に至ったこと。
「お父さんから話を聞いたのは、倒れる少し前のことだったようね。
高校を卒業するにあたって、本当のことを教えてくれたと言ってたわ。
お父さん、ずっと後悔していたそうよ……。
親の身勝手な行動で二人を引き離してしまい、お互いの姉や妹の存在を隠し続けたことを」