【SR】メッセージ―今は遠き夏―

双子だと知れば、成長するにつれ、次第に会いたいという気持ちが募るだろう。

だったら、最初から姉妹の存在は明かさずに居た方がいい……。

そう判断した両親は、おのおのの引き取った子供に双子の事実は話さないことを約束したのだ。


「お父さん、千夏ちゃんに何度も頭を下げたって言ってたわ。

いつか、必ず会わせてあげたいってね」


それ以来、千夏はどこかで暮らす姉を思い、憧れ、いつか来る再会の日を夢見ていた。

源氏名を決める時も、迷わずモモカと名乗ったと言った。


「お父さんの名前が一男。お母さんは十和子。あなたたちが百夏に千夏。

なんとなく、幸せだった頃のお二人の姿が浮かぶわよね」


一と十、そして、百と千――。

父を筆頭に、どんどん末広がりになってゆく家族の幸福な姿を思い浮かべた。

そこに込められた思いを感じた途端、溢れ出す大粒の涙を抑えることができなかった。

< 41 / 56 >

この作品をシェア

pagetop