【SR】メッセージ―今は遠き夏―
雲一つない晴天。
水色がどこまでも続く広い空を見上げ、大きく息を吸い込んでみる。
この地で育ち、この地で生涯を閉じた妹の存在を僅かに感じられた気がして、思わず百夏は顔がほころんだ。
「暑い、夏の日だったそうよ。
陣痛の合間に、カップの氷いちごをお母さんの口に運びながら、お父さんは必死に腰をさすったんだって。
生まれた時は、手を取り合って喜んだ――そんな思い出を、お父さんは嬉しそうに語っていたみたい」
きっと、二人が一番幸せな頃だったのだろう。
生まれてきた二人の子供の顔を眺め、これから始まる新たな生活に、期待と夢でいっぱいだったはずだ。
歯車がずれたのは、いつからなのか――。
百夏はそっと目を閉じ、自分の知らぬ遠い夏の日に思いを馳せた。