【SR】メッセージ―今は遠き夏―
墓前に手向けた、白いトルコギキョウとカスミ草がかすかに揺れている。
風の無い午後の日差しが柔らかく照る中で、それは不思議な光景だった。
千夏が、微笑んだのだろうか――。
会いに来るのが遅くなってごめんね。
百夏は、何度も繰り返しそうつぶやいた。
「向こうからじゃ、小樽は遠いからさ。
たまには来てね、なんて軽々しく言えないけど。
こっちに来る用事があったら、ぜひここに立ち寄って欲しいわ。
あたしからのお願いよ」
女性は百夏の手を握り、深々と頭を下げた。
「ええ、必ず。何度も千夏の手を煩わせてはいけないですからね」
心地よい爽やかな風が、三人の頬を撫でた。