【SR】メッセージ―今は遠き夏―
百夏は、悲観的になっている自分が急に滑稽に思えてきた。
同時に、千夏はそんな自分を変えてくれるために、ここに呼んだのではないかという気さえしてくる。
迷惑な隣人も、都心部への引越しも、呆れるほどに遅れて来るバスも。
ここに辿り着くために千夏が敷いた、長い長いレールだったのだろうか――。
『お姉ちゃん、笑って』
……耳の奥で、誰かの声がかすかにこだますると、百夏は大きく頷いてみせた。
「千夏が励ましてくれてるわ」
独り言のようにつぶやく百夏。
繁人はそっと手を取った。
「付き合ってた頃から、千夏には尻を叩かれっぱなしだよ、俺は」