【SR】メッセージ―今は遠き夏―
「頼りない二人だからね、千夏はこれからもずっと目が離せないんじゃない」
搭乗待合室で少し時間を潰した。
テレビモニタに、内戦の地を取材する記者の特集番組が写し出されている。
記者は中年の物静かな雰囲気の男性だ。
取材地の現状を、深刻な面持ちでぽつりぽつりと口にしている。
もしも生きていたなら、このくらいの年齢で、こんな風なのだろうか――見たことのない父の顔が、一瞬百夏の頭をよぎった。
小さな頃、幸せな家族の姿を見るたびに、何度も羨んだ。
すべてにおいて悲観的でしかなかった。
いつしか悔やむことも忘れ、これが自分の運命なのだと言い聞かせるようになっていた。
だが、今は少しだけ違う。
自分の運命は自分で切り開くものなのだと言うことを知った。
それを知ることができたのも、自分の財産なのだと気付く。