【SR】メッセージ―今は遠き夏―
もし普通の家庭で、のんびりとした生活を送ってきていたら、こんな風に気付けなかったのかもしれないのだから。
人生に回り道などない。
そう、百夏に教えてくれたのは、千夏なのかもしれない――。
大きな窓から見える景色はもうすっかり陽が落ち、濃紺の空が広がっている。
空に浮かぶ満月はやけに大きく、月明かりがここまで届くようだ。
その姿は、まるで二人を優しく見下ろしている父のようにも見えた。
「メッセージ――今は遠き夏――」 / 完