【SR】メッセージ―今は遠き夏―
……新手のナンパか、と百夏は思った。
それとも、話題に興味を惹きつけて、乗り出してきたところで夜の世界へスカウトか。
――いずれにしてもバカバカしい。
途端に、百夏の気持ちはしぼんでゆく。
交差点の向こうで、目的のバスが信号待ちをしているのが見え、腕時計に目を落とした。
20分遅れだなんて……ホント、あり得ない。
ため息をつきながら、でも助かったと思った。
この男、なかなかしつこいのだ。
無視しても振り切れる自信がなかった百夏は、このままバスに乗ってしまおうと決めた。
「バスが来たから」
「え?ちょ……ちょっと待てよ!
モモカは相変わらず一方的だなあ。
あの時だって、勘違いだって何度も言ってるのに、結局聞いてくれなかったし。
俺は本当に好きだったし、結婚しようって言葉にも嘘はなかったんだから。
あの後も、モモカのことなかなか忘れられなかったけど、頑張って立ち直ったんだぜ」