オレンジヒーロー

突っ込むのはやめといた。
どうせ『さぁー気になる?』とか言われそうだから。

「笑わねぇの?」

笑わねぇの…か。

「笑えねぇの」

「ふーん」

ふーんって…興味ないなら聞くなよな。

笑えねぇの…
自分で言って悲しくなった。
いつからだろう。
笑えなくなったのは。

「あ…もう一つ」

「え?」

「顔の傷。裏音絡みだろ」

コイツは何でもお見通しだな…。
こういう所苦手なんだよ。
全て見透かされてる気がして。

「はい」

「何これ。字きたなっ」

「うっせぇなーケー番とメアド!!
なんかあったら俺呼ぶ事」

「なんで」

「はっなん?…ヒーローだから?」
一瞬言葉に詰まった。


「っアタシのじゃないじゃん」

「お前のでもあんだよ!
お前弱いからな」

安西はいつもとは違うクシャッとした顔で笑った。
この笑顔…本物かな。
ん?弱い…?アタシが?喧嘩勝ってんじゃん…弱いところなんて見せた事ない…。
やっぱりあんた…アタシの事見透かしてる?

「弱くないし」

「そ。…帰るかぁ!!」

急にいつものテンションにもどる。
アタシに``素''を見せるのもほんの一瞬。
ただ、その一瞬の冷たい``素''が今のアタシには暖かく感じてしまって甘えそうになる。
ふいにいつもの自分が考える。

`また信じる訳?'
そうだ。信じてはいけない。
アタシを信じてくれる人なんていないんだ。
上辺だけ。アタシには誰もいない。
明日、目を開ければアタシは1人かもしれない。

「顔死んでんぞ」

「五月蠅い」

自転車で家に帰る。
安西とは途中で別れる。
アイツは家まで送るって言う優しさはないのか。
と別れ間際で考えていると

「土屋亜珠なら送るけど
お前は心配いらねぇだろ」

ヘラヘラした顔で笑う。

「はいはい。じゃ」

「明日なー」

てきとーな声で目も合わさず自転車をこいで行ってしまった。
また心ん中読んで…。
アタシは緩い坂道をゆっくり自転車で登った。
帰るとおばあちゃんが笑顔でむかえてくれた。

「あらあら沙雪、おかえりー」

「ただいまばぁちゃん。」

アタシは静かに家に入った。

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