オレンジヒーロー
アタシはおばぁちゃんと2人で暮らしている。
親は知らない。
記憶にない。あるとすればおばあちゃんちに預けられた所ぐらい。顔も覚えていないそんな存在だ。
別に親に会いたいと思った事もない。
早くにおじいちゃんを亡くしたおばあちゃんはアタシに凄く良くしてくれる。
だから別になんも望まない。
ただおばあちゃんの話によると毎月親から仕送りがくるらしい。
それがないと生活はできないけど
親面されるのは何か気に食わなかった。
「なんだこれ」
ブレザーのポケットに突っ込んでいた紙を広げる。
あぁ。アイツのメアドとケー番。
私は仕方なく携帯に登録する。
「安西真広」は私のアドレス帳の一番上に登録された。
アドレス帳を開く度コイツの名前が目に入るのは嫌だな。と思いつつ静かに携帯を閉じる。
寝ようと思って真っ白いベッドの上に寝転がり真っ白な天井をみる。
こう説明するとアタシの部屋は色が統一されていてキレイと言うイメージをもたれそうだけど
全くだ。もしこのまま俯せになったら床に散らかった衣類やノートが露になる。
だから現実逃避のように上を向いて寝る。
片付け・料理・裁縫…女子らしい事は全て苦手。
中学で家庭科の成績は常に2だった。限り無く1に近い2。
先生にはあきれられた。
「女の子なんだから…」
差別か。女子だって家事は苦手な奴はいるんだよ。
高校は家庭科は選択だから良いんだけど。
それより今日は寝れない…。
いつもなら帰って服を着替えてすぐ寝れるのに。
あっ服着替えてない。
体を起こし着崩した制服を脱ぐ。
カッターシャツの上からきたパーカーを脱ぎ床に落とすとベッドの上に置いたサイレントモードの携帯が光った。
いつからサイレントモード解除してないだろう…。
携帯をとり開けるとディスプレイには知らない番号。
誰だ…?
ピッと電話にでるが自分から喋るのは嫌なのでアタシは黙っている。
しばらく喋らないと向こうからガサガサと音が聞こえた。
耳障り…誰だよ。
アタシは携帯を耳から離し電話を切ろうとすると声がした。聞き覚えのある声
『もっもしもし沙雪?』
慌てて携帯を耳に近付け直す。
「土屋亜珠?」
『今…大丈夫?』
土屋亜珠は優しい声だった。