加納欄の張り込み シリーズ3
 あたしは、自分の手のひらで体をさすった。



あ、吉井さんに連絡とってない。



 そう、思った時に、大山先輩が起きた。

「大丈夫ですか?何か欲しいのありました?」

「欄、コート着てろ。風邪ひくぞ」

「私なら大丈夫ですよ。ちょっと寒い方が、仕事に集中できますから」

 やんわりと辞退した。

 本当はコート着て、温かい紅茶飲みながら、見張ってる予定だったのに。1人だと、トイレの都合もあるから、飲むの我慢するしかなかった。

「いいから着てろって。お前まで倒れたらマズイだろ」

「大丈夫ですって。私より、大山先輩さっさと治しちゃって下さいよ。そしたらコート返してもらいますから」

 あたしは、1度窓を閉めた。

「バカ、開けとけ。いつ真中が帰って来るかわかんないだろ。飯も今のうちに、食っとけ。その間、オレが見てるから」

「なに言ってるんです?そんなフラフラな状態で、神経使ったら余計熱が上がるんですから、大山先輩は寝てて下さい。ご飯だって、見張りながらだって食べれますし」

 大山先輩が、無理に起き上がろうとして、バランスを崩した。あたしは、慌てて大山先輩の所に駆け寄って、助け起こした。

「大丈夫ですか?」

 大山先輩の目が熱があってボーッとしてるのがわかった。

「大丈夫ですか?」

 あたしは、もう1度言うと大山先輩を抱えて、横にさせようとした。

「欄」

 大山先輩が呼んだ。

「何ですか?」

 あたしは、答えた。

「欄」

 大山先輩がまた呼んだ。

「いますよ。近くにいますから、何かあったら呼んで下さいね。私、見張りの続きしますから」

 そう言って、大山先輩から離れようとした。

すると、大山先輩があたしの手を握った。

「行くなよ」



え?



「大山、先輩?」

「側にいろよ」



熱でうなされてるの?



それとも、本心?



「大山、先輩?だ、大丈夫ですか?私、仕事、あります、から」



あたしだって、大山先輩の側にいたいけど、仕事しないといけないし。



「欄、寒いから、暖めてくれ」

 我が耳を、疑った。



暖める?



暖めるって言った(>_<)




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