加納欄の張り込み シリーズ3
 そのあとは、大山先輩に羽交い締めにされ、口をふさがれてしまった。

「バッ!バカッッ。何を突然!!やめろっ!!人聞きの悪いこと言うなっ!!」

 大山先輩の大きな手が、あたしの口と鼻さえもふさぐ。



ク、クルシィ(>_<)



お、覚えてなさいよ!



あたしは、なんだか悔しくて、いつか色気で見返してやることを誓った。




数日後。

 いつもの日常を送っていた。

「欄、これやっとけって言ったろ」

 大山先輩にお小言を言われた。



やっとけって、それは大山先輩が課長に言われた仕事ですよね。



これは、断わっていいですよね。



「大山先輩!自分の仕事は自分でやって下さい!私だって仕事たまってるんですから」
 
 言った瞬間にすかさず大山先輩が、あたしのほっぺを両方つまみ、ビヨ~ンと伸ばした。

「ほお、どの口が言ってんだ?」

 グリグリ回す。

「イ、イヒャイ……」

「ごめんなさいは?」

「ゴヘンナヒャイ」

「反省できたか?」

「ファイ……」

「よし、わかればよろしい」

 そう言って、大山先輩は、ほっぺたから手を話してくれた。あたしは、ほっぺたをさする。



ウリュ~。



おっきいガキ大将めっ!



覚えてなさい!!



毎日毎日、仕事おしつけてぇ!



嫌いだぁ!



大山先輩なんてっ!!



そうだよ!



あたしは、大山先輩なんて好きじゃなかったんだよ!!



いっつもいっつも、嫌な仕事は全てあたしにおしつけて!



それが当たり前かのような顔して!



ふんっ!



あたしは、たった今から、大山先輩なんて好きじゃなくなったんだから!!



そう思ったらなんだか、胸がスッとしてきた・・・ような。



「何、考えこんでるんだよ。難しい顔して」

 大山先輩があたしの顔を除き込んだ。



ドキッ!



こ、こらっ!反応するなっ!



あたしは大山先輩なんて何とも思ってないんだから!



「大丈夫か?顔赤いぞ」

 さらに、大山先輩が除き込む。

 あたしは、慌てて視線を外した。

「だ、大丈夫です。何でもないです!」



そんなに見ないで下さい~。



「熱あるんじゃないのか?」

 そういうと、大山先輩はあたしのおでこに自分のおでこを付き合わせた。

ドキュ~ン!!!!

「少し熱いな。具合悪かったんだったら早く言えよ。これは苫利にやらせるから。薬飲んで少し寝てこい。何かあったら知らせるから」



ハゥ~ン。



ヤサシ~。



大山先輩ラブですぅ~。



 一瞬にして大山先輩への怒りが消えた。
 結局、あたしの頭には、大山先輩への思いが、大きく占めていたのだ。


―おわり―
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