恋乃仕方
「はい、あとは石井さんが書くだけだよ。」
「あ…はい…どうも」
青山くんは自分のシャーペンと一緒に日誌をあたしに向けて差し出し、やっぱりさっきみたいに、ふっと笑顔になった。
あたしはなんだか緊張して青山くんの前の席に座り、青山くんに背を向ける形で日誌を書き出した。
「あ、このシャーペン書きやすい…」
「でしょ?」
「えっ?」
でも気付けば青山くんはあたしの前の席に後ろを向いて座っていて、あたしの目の前には青山くんがいた。
青山くんはじっとあたしを見つめていて、
「苦手?」
「え?」
「俺のこと」
「あの…別に…そ…そんなんじゃなくて…」
「ホントに?俺のこと苦手じゃない?」
「は…はい」
「そっか。良かった〜」
「え…あの」
「ほら、日直って名前順じゃん?これから日直ある度に石井さんに嫌な思いさせるかと思ったし。」
「そ…そんな!むしろ青山くんの方があたしなん…」
"あたしなんか嫌でしょ?"
そう言いたかった。
なのに
何故か、
何故だか
その先は言えなかった。
あまりにも
あまりにも
青山くんの瞳が綺麗で
でもどこか深くて
上手く言えないけど
あたしの言葉は行き場をなくしてしまった。