腐り鎖のグサリ
あの人がその日、突然拳を振り上げるのをやめました。そしてこんなことを言ったのです。「今まですまなかった」私はとても驚きましたし、むしろ、そんなに肩を落として俯いているこの人を見たことがありませんでしたから、当惑して、いえいっそ呆気に取られて、笑みのようなものさえ浮かべてしまいました。

すべてが連鎖していくのでしょう。

「いいえ、どうぞお気になさらないで」肩に手を添えてみると、この人の体は小刻みに震えていました。まるで私のようではありませんか。だから、なんといえばよいのでしょう、だれより近い他人という誓いを立てたこの人を、いまさら、いえ、今またいとおしく思ってしまい、息子のように強く抱き締めてあげました。私の腕を掴むこの人は、「俺が間違っていた」と何度も繰り返し、やがて、爛とした眼差しで立ち上がりました。

「息子が悪い」と、発せられた言葉に愕然としました。呆然はどこかへ消え、私の頭の中で、腐った鎖がぐさぐさと音をあげて脳みそへ突き刺さるのを感じました。

すべてが連鎖していくのでしょう。
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