腐り鎖のグサリ
どうかそんな考えはよしてください。悪いのは私でいいのです、お気に召さなければ私を殴ってください。私でいいではありませんか。必死の訴えも、しがみついた腕も振りほどかれ、この人は台所から包丁を持ち出しました。私は悲鳴をあげましたが、この人は鬼のような形相で、優しく語りかけてくるのです。

息子が生まれたからおかしくなった。俺は息子のせいでおかしくなった。正常になってやる、お前を以前のように大切にしよう。だから息子が邪魔なんだ。いや違う。本当に狂っているのはお前の方だ。息子に魅入られたお前がおかしいのだ。だから俺はお前を救ってやる。少し待っていろ。すぐだから。

やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください。

何度言ったかわからない訴えのさなか、私は息子の声が家中に響くのを聞きましたし、その声がなにかに溺れたようにゴボゴボと濁るのまで聞きました。

あ、い、いや、ああっ、私は、いや、息子が、だけが、ああ、いてくれれば、いやっっ、よかったのに、なぜっ。

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