今宵、月の照らす街で
「長官。政都の件はいかがなさいますか?」


京都宮内庁対策室。


長官・月那主宮廉明は長官付秘書の声に少し顔をしかめ、右手で握る湯呑みに入っていた玉露入りのお茶が微かに揺れた。


「半鬼の件か」


「月那主宮本家書院にもケースが余り見られません。対策を練るにも正直どうすればいいものか…」


漏れる溜息。


「葉月と梅宮に連絡。東京に調査員として派遣する」


「直ちに手配します」


秘書は軽く礼をして踵を返し、執務室を後にする。


秘書のピンヒールが床を叩く音だけが静かに響いた。


「すべては決められたシナリオなのか…」


秘書の足音が消えたのを埋める様に廉明は一人、呟いた。
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