今宵、月の照らす街で
政都東京。


空を見上げれば黒のカーテンを背景に三日月が夜の街を照らす。


不夜城、東京。


人の数だけ煩悩が存在すると言われるが、四六時中動く街から溢れ出すソレは人口の比では無いと、師の明奈は成二に言ったことがある。


半鬼を倒した後、死亡した媒体が異状死体にあたる事を理由に、対策室は司法解剖を実施。


杏里は被害者家族に「外傷による事故死」と説明したが、事実は他殺。


遺体の背には呪印が刻まれていたのが何よりの証拠。


「若い時から小難しい顔してたら眉間にしわ寄るよ?」


「はるか先輩」


はるかはニコッとして、成二に缶コーヒーを渡す。


「オゴリ。お揃いだね」


もう一方の手には、成二に渡したものと同じものが握られている。


「ありがとうございます」


成二の任務は、最近では単独任務が多くなった。


明奈は八龍の一角を担う存在だからか、だるそうにしながらも仕事に勤しんでいた。


そこで明奈の代役、かつ単独任務での救護などの補佐役に、はるかと組むようになっていた。


そして今日も。
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