今宵、月の照らす街で
小龍沢の末弟は、正直何を考えているのかわからない。


だが、歴代最強クラスの小龍沢家術士に匹敵する実力の持ち主。


3つの家系でそう囁かれて今まで闘い続けてきた小龍沢の末弟に、制服姿の女子高生が近付く。


「せーちゃん」


親しみが込められた名に振り向くと、幼なじみが立っていた。


「葉月[ハヅキ]…」


月那主宮葉月。月那主宮家の三女で末っ子。成二とは同い年の退魔師。


「久しぶりだね」


葉月と会うのは何時以来だろうか、久しく見ない内に、また大人っぽくなった様に見える。


ふと葉月と視線が合う。


それに気付いた時、成二はどうしたらいいのか、少し混乱したが、それ以上に葉月の視線が途切れる事がなかった。


「…どした?」


思わず顔を覗き込む。


「何でもないよ!」


葉月は少し焦りながら、笑顔になる。


「清明館はどう?」


私立清明館学園高校。成二の通う名門校。


「まぁ…普通かな」


「そっか」


口数少ない会話だが、長い間見て来たせいか、葉月には短い言葉の中から成二らしさをたくさん感じた。
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