今宵、月の照らす街で
『どういう事だね、小沢君』


政都宮内庁対策室。


多香子の執務室のデスク前には多数のディスプレイが並ぶ。


「報告の通りです。秋葉原電気街を中心とした半径20kmを全面封鎖して下さい」


『不可能だ!住民には何て言えばいいのだ?』
『それに避難場所の確保と当面の生活保護対策もある』
『対策費用に関しては宮内庁予算で負担出来ないかね』


―――なんでくだらない会話ばかりに華が咲くの…!


多香子は呆れた表情を隠せなくなる。


『失礼ですが…今は論点が少し違いますぞ、大臣殿』


『月宮君…我々はふざけて会話している訳では無いぞ』
『そうとも、これも大事な話じゃないか』


老人達は自分達の会話を曲げようとしない。


『金も大事だが、我々の言う通りに住民を避難させないと、その予定以上の金が飛ぶぞ』


廉明の声に内閣執行部の老人は絶句する。


『…警察庁及び政都警視庁に通達しよう。小沢君、月宮君の指示に従う』


内閣総理大臣・國井首相が険しい声で応える。


「ありがとうございます」


わからずやの執行部のトップが理解者だったことに、多香子は安堵の息を漏らした。
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