今宵、月の照らす街で
“陰”が視界から消える。


気を集中させて、感知した時には既に頭上にいた。


「壱ノ印[イチノイン]…」


桜は右手を目一杯開く。


「鳳仙花[ホウセンカ]!」


右手をそのまま“陰”に向かって思いっきりぶつける。


「ギギギギッ…!!!?」


空間に紋章が現れ、それが壁となって“陰”を阻む。


ぶつかった衝撃で、紋章は激しく光り、紫電を走らせた。


「衝[ショウ]!」


桜が開いた右手をギュッと握った瞬間、紋章は一点に集中し、一筋の閃光を“陰”にぶつけた。


「ギャァァァァァ!!」


閃光が直撃した脇腹を抑えながら“陰”は地面を転がる。


そして桜に憎悪と殺意を秘めた瞳を見せた。


桜はたじろぐ事なく、大きく息を吐いて、右半身の姿で右手を敵に向ける。


「お前が強いってわかってる。だから絶対に容赦しない」


言葉を発したと同時に、橙色の柔らかい波動―――如月家の波動が桜を包む。


そして桜の蒼玉の瞳に、戦意の炎が宿った。
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