今宵、月の照らす街で

―市ヶ谷靖国通り―

市ヶ谷靖国通り。


政都警視庁により検問が設置され、立入禁止のテープが道一帯を封鎖している。


その先には秋葉原電気街や政都宮内庁庁舎と変わらぬ、死に満ちた地獄絵図。


「政都宮内庁です」


八龍の一人・霞結衣が検問を指揮する刑事に声をかける。


「ご苦労様です…政都警視庁捜査一課警部、玉木です…ただ…先に入った宮内庁の方々が…」


玉木警部が心配そうな表情で口篭る。結衣にはその理由が何となく理解出来た。


「死んだか」


「コラ、京介[キョウスケ]」


もう一人の八龍・鏨京介が、封鎖された靖国通りの奥を見つめた。


そしてその先に爆発音が鳴り響き、ビルの一つが倒壊した。


「発砲、構え!」


玉木警部が大声を張り上げる。


「結衣…」


「うん、行こう」


京介と結衣は検問線と平行に並ぶ警官隊を跳び越えて、倒壊したビルへと駆け出した。
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