今宵、月の照らす街で
ビルの倒壊から巻き起こる砂煙の中から、人の頭を掴んだ男が出て来た。


「これはこれは…懲りずに増援ですか?無駄だと言うのに」


男からは“陰”の波動が強く感じられたが、それ以外は何もない。


“陰”のみで構成されていると言っても過言ではない姿だった。


「テメェ…何者だ」


京介が口を開くと、“陰”は掴んでいた人間を京介に投げつけた。


京介はその人間…最早、息をしていない対策室のメンバーを受け止め、静かに寝かせる。


「さぁ?自分でも自分が何者かわかりません。人を殺し続ければ存在意義が見出だせる、と教えて頂きましたが…」


京介は一度、“陰”を見てから溜息をついた。


「俺は言葉を話す“陰”の存在を初めて見たぞ」


「そんなの、私も初めてだって」


結衣は呆れた表情を浮かべる。


「まぁ…なんだ。取りあえず、コイツをブッ潰そう」


「私、パス。京介に任せる」


結衣は手をヒラヒラさせる。明らかに興味が無いように見えた。


「…へいへい」


京介の足元から金属が刃となって飛び出して来た。


「鏨家当主・鏨京介だ…行くぜ」
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