今宵、月の照らす街で
仮対策室は霞ヶ関庁舎のそれとは違い、室長のデスクと全9部隊長用のデスクのみがあるだけ。


剣一郎が少し小さな部屋に入ると、直仁以外の八龍と、多香子、紘子、成二の3人が揃っていた。


「葉月の所へ行ってくる」


丁度入れ違いに、成二が対策室を出ていく。


「多香子、私も行くわ」


明奈も成二を追って対策室を出た。


室長はしばらく二人の出た扉を見つめる。それを見ていた剣一郎の姿を見た多香子は、ハッとして仮対策室を見回した。


「さて、忘れない内に続きを話し合おっか?」


多香子が口を開く。


「とりあえず、結界を内側と外側から壊すって話だったけど…私、紘子、明奈さん、千鶴、京介。後は本庁が選んだ5人が外からって事でいいかな?」


「いいんじゃない?今までの調査から一番合理的だと思う」


千鶴が手元の書類をパラバラ見ながら同意する。


「紘子?病み上がりだけど、大丈夫?」


結衣が紘子を見る。紘子は少し微笑んで、右の人差し指をクルンと回す。同時に、風が優しく吹いた。


「心配するだけ無駄だったかな?」


「問題は明奈さんだろ」


京介が目を細める。


「本庁に在籍した時に気にかけた奴に疑惑がかけられてんだ。少し気が乱れるかも知れん」
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