今宵、月の照らす街で
時同じくして、政都より遠く離れた某所。


洞窟の様なその場所は、要所要所に松明があるだけて、それ以外は暗闇に包まれている。


「アルファ。何故、蛍剣一郎を殺さなかった」


先日の事件で、剣一郎と闘いを繰り広げた男、アルファ。


松明で照らされた彼の左頬に、笑みが浮かぶ。


「中々強かったですよ?本当に。さすがは八龍って感じました」


暗闇に投げ掛けたその声が消え、静けさが拡がる。


「…まぁ良い。月宮葉月と梅宮カオルの捕縛も全て計画通りだ。これでまた我が宿願が近付いた」


アルファは溜息をつく。


「創造主様。計画は順調ですが…ベータにイプシロン、ガンマは消えましたよ」


「弱い者は死に、強い者は生き残る。あの二人は弱かっただけ」


暗闇から、新しい女の声。


「創造主殿の計画には狂い等無い。あ奴等の消滅は初めから計画に組み込まれてはおらぬ」


そして、また別の低い声が響く。


「さぁ、小龍沢よ。貴様等の血を我に捧げ、安らかに死ね!!」
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