今宵、月の照らす街で
「長官、いいですか?」


『明奈。久しいな』


明奈が頭を下げる。


「京都は大丈夫ですか?」


『…どういう意味だ?』


「兄に会いました」


『な…』


廉明が驚愕の表情を浮かべる。明人の結末を見ている長官の反応は、当然だった。


「兄が“京都に向かえ”、と。教えて下さい、長官。京都で何かあるのでは?」


『…葉月と梅宮との事から本庁対策室の不透明性が出て来た。だが、私が直接内部を審査した。結果、何も無かったよ』


「…じゃあ、京都と言う都市自体は?」


『その可能性も否めず、現在調査している。しかし…明人に会ったとは…?』


明奈が身を乗り出した。


「既に陰に取り込まれていました。祓った後で、兄がそう教えてくれました。あの兄が、何の根拠も無い話を切り出す訳ありません。長官、本当は何か京都で起こっているのでは?」


廉明が俯く。


『…あ奴が死ぬ直前、よく漏らしていたのが、“京都が危ない”と言う言葉。京には何かあるやも知れぬ』
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