今宵、月の照らす街で
夜と陰の結界の存在の為、仮庁舎から出た途端、多くの下級怨霊が徘徊していた。


これもまた、現在の政都東京の一つの問題だった。このせいで、普通の生活から切り離された、結界内の人々は夜を恐れた。


「こりゃ、まだまだ増えるかも」


「結衣さん、俺、こっちやります」


「わかった。桜はそっちお願いね」


「…」


それぞれが臨戦モードに入る。その気配を察して、怨霊が成二達を見た。


3人は構わずに、地面を蹴る。そして、3ヶ所で土煙が上がった。


成二は大剣を風に乗せて。


桜は手にした呪符を繰り出して。


結衣は大気中の水分を操りながら、早いペースで怨霊を薙ぎ払う。


何事も無く、間もなく怨霊の掃討が終わろうとした時、怨霊は一点に集まりだした。


個々の存在を、下級怨霊ながらも吸収し、進化を遂げるケースが時々ある。


成二達の目の前で起きた、その吸収現象は、仮庁舎前に存在した怨霊だけでは無く、広範囲から多くのそれが吸い寄せられていた。


「でっかいなぁ…」


結衣がポカーンとする。


「オオオオオオオ!!!」


大気を震わせて、新しく生まれた鬼神が、けたたましい咆哮をあげた。
< 211 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop