今宵、月の照らす街で
道を走る車は一台も無く、対策室の車だけが風を切って行った。


5人を、陰の柱がある地点それぞれに配置して、最後の地点に多香子が降り立つ。


腕時計を見ると、短針と長針が重なり、0時を指していた。計画に狂いが無いなら、京都宮内庁の腕利き達が、結界の外―――柱で見えないが、すぐそこにいるはずだ。


「準備はいいかな?」


多香子はピンマイクに声を入れた。


『政都対策室側に問題ありません。京都宮内庁対策室スタッフも既に待機しているとの事です。いつでも作戦実行に移せます』


あずさの声が届いた。


「じゃあ始めましょう」


多香子が、自らが持てる気を全て解放する。それは、多香子を中心とした竜巻だった。


風が天に逆巻き、轟く。


左手を前にかざすと、光に包まれて嵐紋菊一文字が姿を現した。


『室長、及び各員に通達。結界内外の力が最大限に到達しました。私の合図で柱を攻撃して下さい』


あずさの声に、5人は更に集中する。


『カウントスタートします…3…2…1…GO!!』


合図と共に、陰の柱が眩しく輝いた。


政都とは遥か遠くの森の中、アルファは月を見つめていた。


政都の方角から見えた、まばゆい光を見つけると、アルファは微かに笑みを浮かべた。
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