今宵、月の照らす街で
突然、仮庁舎の一部が崩れた。


そこから姿を現したのは、成二と結衣だった。


「成二!?」


多香子達が駆け寄る。成二は焦りと不安の入り混じった表情を浮かべていた。


「他のみんなは?」


紘子が崩れた仮庁舎を見つめながら、問い掛ける。


「剣一郎さんと桜、杏里さんが安全な場所に避難させた」


「…で、何なんだ、この殺気」


京介もまた、仮庁舎を神妙な面持ちで見つめた。


「私達、まんまと嵌められたみたい…」


結衣が恐る恐る話す。


「あの結界は、結界と同時に、気を吸収する装置…みんなが壊した時の力が…全て一つに集約されて、一人の人間の能力を馬鹿みたく上昇させてるの…」


「一人の…」
「人間…?」


仮庁舎の崩れた場所から、一人の人影が見えた。


「誰なの、あれ…」


月明かりが鎧を纏った人間を映す。


「葉月…月宮葉月だよ!」
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