今宵、月の照らす街で
成二の口から告げられた、驚愕の名前。


その葉月の、西洋甲冑に身を包み、左手には盾、右手には槍を携えた姿に、全員が沈黙する。


唯一露出された唇は、真一文字が浮かび、何も語ろうとはしない。


「ったく…!!」


成二が駆け出す。瞬く間にトップスピードまでギアを上げ、成二は地面を蹴る。


葉月の遥か頭上まで跳び上った成二は、逆手に大剣を構え、重さを利用して葉月に向かった。


「目ェ、覚ませ!!」


その声に、葉月は初めて成二を見上げた。だが、防ぐには間に合わず、成二の一撃が葉月にぶつかった。


その衝撃に瓦礫が更に崩れ、土煙が舞う。


「成二!葉月!」


多香子が名を叫ぶ。


土煙はしばらく晴れず、瓦礫の破片がパラパラと転がる音が鳴った。


やがて土煙が晴れると、うなだれた成二の首を掴み、空に掲げる葉月の姿が見えた。


「成二!!」


弟の名を呼んだ多香子の両サイドから、千鶴と京介が走り出した。


京介が先程の成二の様に、空高く跳び上がる。一方で、千鶴はそのまま地面を駆け抜け、脚に気を集中させた。


葉月は二人をゆっくりと眺めると、成二の首を離した。


「ぐっ…」


成二が崩れ落ちる瞬間、二人の蹴りが葉月を捕らえた。
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