今宵、月の照らす街で
「…!」


京介と千鶴は目を丸くした。


葉月の周囲に展開された障壁が、二人の蹴りを防いでいる。貫通の特性を持った京介の一撃でさえも防いだその障壁に、全員が息を呑んだ。


『政都対策室の諸君』


葉月の口が開いた。葉月の声と、低い声が重なって聞こえる。


『君達のお陰で月那主宮の宿願が現実となる』


微かに聞こえる、覚えのある口調に、多香子が歯を食いしばった。


「これは一体何の真似なの…月那主宮廉明!!」


「!!?」
「な…」
「長官…?」
「…」


京介が倒れた成二を掴み、千鶴と間合いを取る。


『流石だな…小龍沢多香子。もう気付いたか』


「葉月から感じる波動の純度が高すぎる。こんな力出せるのは私か陛下、それに貴方しかいないでしょう」


『ふふ…』


「長官!」


明奈が声を張り上げた。


『おぉ…明奈か』


「今回…兄さんを利用したのは…」


『私だよ』


葉月の口が歪む。


『全く明人は厄介だった。4年前も…今でさえも』


「…!」


明奈が力無く膝をついた。


「死者までも愚弄するなんて…堕ちたものね、月那主宮廉明」


多香子が言った。


「目的は?」


『月が隠れた時代は終わりだ。日は沈み、月が世を支配する』
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