今宵、月の照らす街で
皇居・天玉院の間。


「覚悟、か。多香子にも言われたな」


廉明が笑う。


「では、覚悟する事にしよう。だが貴様等も覚悟をして頂く事になるが…よろしいか?」


廉明がパチンと指を鳴らすと、闇が拡がり、清水寺の一団を遥かに上回る陰や魔が姿を現した。


「邪魔」


透き通る声の主へと、広間に居る人間が一斉に天井を見る。


その人間が天へと伸ばした右脚が雷光の様に魔の集団の中へと突き刺さる。


激しい轟音が響き、それを中心に風が弾け飛ぶ。その烈風は刃となり、半鬼、鬼蜘蛛、鬼神、天狗をいとも簡単に切り刻んだ。


「成二ィ………ッ!!」


廉明が怒りを剥き出しにする。その成二は、平然として、名を口にした廉明を見た。


「あんたは今すぐ叩っ斬りたい………葉月を利用しやがって」


右手に風を集め、その風を球体に変えた。


「成二…それ…」


紘子が成二のそれに眼を丸くした。


「嵐玉[ランギョク]…!」


嵐玉と呼ばれたその小さな風の球を、成二が握り潰す。すると風が吹き荒れ、成二の右手に一本の大剣が姿を現した。
< 262 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop