今宵、月の照らす街で
煙草を口にし、静かに火を点け、大きく煙を吐く。


その京介の右足は、オメガの後頭部を踏み付けている。


京介が煙草をゆっくり吸い込むと、右足がピクリとするのを感じた。


京介が素早くバックステップで後ろに下がった時、今まで立っていた位置を、鋭い4本の腕が切り裂いた。


「まだ生きてたか」


「貴様ァ…よくもまぁ愚弄しよってェ……!!!」


空間が怒りで歪む。


殺気と怒りに満ちたプレッシャーに大気が震える。


「おぉ、ちったぁ楽しませてくれそうじゃねぇの」


京介がニタリとする。


二人が間合いを詰めたのは、ほんの一瞬の出来事だった。


京介の右手と、オメガの右手がぶつかり合い、その瞬間に音が止んだ後に、大気が破裂する。


その一発は、互角。


「あぁ…なるほどなぁ…爺さん。あんた強いわ」


京介の言葉に聞く耳を持たず、オメガは左手と空いた右手の両側から攻撃を続ける。


京介は右足をタンッと踏み、地中の金属を刃に変え、それを攻めと変えた。


地面からの無数の刃に、オメガが空へ逃げる。


そのまま体制を整え、宙に制止するオメガは、京介を見下して問い掛けた。


「汝、名は?」


「鏨家第96代当主…鏨京介だ」
< 265 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop